私は、中等度感音性難聴の教員です。現在、小学校で働いています。前回の記事「難聴者は働きやすい?~小学校という職場 その①~」に続き、小学校は難聴者が働きやすい職場なのか、実際に働いてみて考えたことをまとめていきたいと思います。
校内でのポジションによる違い
小学校教員といっても、立場はいろいろです。管理職、通常学級の担任、特別支援学級の担任、音楽や家庭、理科などの専科と呼ばれるポジション。基本的には新年度、4月が来るたびに新しい持ち場が決まり、1年間担当します。
私はこれまでに、通常学級の担任と、特別支援学級の担任を経験しました。通常学級で30人以上の子ども達を見ているときは、朝から夕方まで常にたくさんの子ども達と接し、業務量も多くなりがちで残業続き。毎日耳鳴りがやまない時もありました。
特別支援学級の担任は、ケースバイケースだとは思いますが、基本的に受け持つ子どもの数が少ないので、教室内の話し声や音が少なく、通常学級にいるよりは聞き取りがしやすい環境にいられる時間が長いです。もちろん通常学級の担任とは違う苦労があるのですが、耳への負担は通常学級の担任より少ない印象です。聞こえのことだけを考えれば、特別支援学級の方が落ち着いて働けるのではないかと思います。
ただ、毎年のポジションの決定権は校長先生にあります。年度末に、次年度のポジションの希望を聞いてくれる校長先生も多いようです。学校によっては、特別支援学級のクラス数が少ない、特別支援学級担任を希望する先生が多い、などの理由で、希望しても通らない時があります。
私は年々、通常学級を担当するのはしんどいな、と感じ始めています。しかし、この先全く担当できないのも寂しいなという気がします。ないものねだりですね。
小学校で働きやすいと感じること
ここまでは小学校で働いていて困ることばかり書いてきましたが、働きやすいと感じる場面もあります。
まず、同僚とのコミュニケーションですが、小学校教員は仕事柄、声が大きく、はきはき話す人が多いです。毎日何時間も子ども達を相手に話しているので、相手に伝わりやすい話し方が身についているのでしょう。私は大きい声を出すのは苦手ですが。😂感音性難聴の場合は声が大きくても聞き取れるとは限らないのですが、声が小さいよりは大きい方がやはり助かります。
また、いろんな特性を抱えた子ども達と日々接しているので、障害にも一定の知識と理解がある方が多いと思います。もちろんその学校の先生方との人間関係にもよると思いますが、配慮を申し出やすい環境ではあると思います。ただ、軽度・中等度難聴については、聞こえ方が人によって大きく変わるので、自分の聞こえ方をある程度説明することは必要だと思います。とはいえ、私も上手く説明できないことが多く、今も伝え方に悩んでいます。
工夫してできること
もちろん、できる工夫もあります。
- 子どもに耳のことを伝えて、なるべく近くで話してもらう。
- 同僚にはあらかじめ「聞き取りが苦手な場面」を共有しておく。
- 会議の資料は事前に読み込んでおく。
- UDトークなど、文字起こしアプリを活用する。
- 休憩中にしっかり「耳を休める」。
すべてがうまくいくわけではありませんが、少しずつ働きやすくなる方法を見つけていくことで、乗り越えられる場面もあります。とはいえ、「個人の工夫や努力」でなんとかしているのが現状で、根本的な環境改善はまだまだ足りていないと感じています。
小学校は働きやすい? 正直な答え
「難聴の人にとって、教員は働きやすい仕事か?」と聞かれたら、正直、「イエス」とは言えません。
人の多さ、音の多い教室、電話、会議、保護者対応――人とコミュニケーションをとったり、話を聞きとることが必要な場面が多いです。できないことはできないと割り切り、周りの人に助けてもらえばいいとは思いますが、やはり心苦しいですし、そんな日が続くと「迷惑ばかりかけている」と感じてつらくなることもあります。
それでも、子どもたちと何気ない会話をしたり、たくさんの笑顔が見られたり、成長の瞬間に立ち会えたりと、他の仕事では得られない経験をすることもできます。私にとって教員は、「簡単ではないけれど、やってよかった」と思える仕事です。周囲の理解が得られ、環境やサポート体制がもっと整えば、難聴の方にも十分に長く働き続けられる可能性のある職業だと思っています。
おわりに
この記事を読んでくれた方の中に、「難聴だけど教員になりたい」と思っている人がいたとしたら――ぜひあきらめずに挑戦してほしいと思います。ただ、どんな仕事をするとしても、長期間働き続けられる環境かどうかということも考えてほしいです。
たとえば以下のような視点を持ってみてください:
- 難聴が進行性の可能性は? 5年後、10年後も続けられる?
- 周囲に支援を求めやすい職場か?
- 自分に合ったツールや方法を試す余地はあるか?
また、難聴の方が身近にいないという方も、もしかしたら周りに言えず聞こえにくさを抱えて生きている人がいるかもしれません。「障がい者手帳がなくても、軽度・中等度難聴者でも、日常の中に“見えにくい困りごと”がたくさんあるんだ」ということを、多くの人に少しでも知っていただけたら嬉しいです。
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