
あめんぼあかいなあいうえお!かきのきくりのきかきくけこ!

びっくりしたー!!!急に早口言葉始めてどうしたの!?声でっかいし!!

ごめんごめん!今日は子どもと話してて発音が変だったみたいなんだ。だから口の動きを滑らかにしようと思って。
「発音がはっきりしないね」と言われたことがあります。自分では普通に話しているつもりなのに、どこか違うらしい。発音の仕方を意識して変えてみても、なかなか思うようにいきません。実は、これには「難聴」が関係していることがあります。発音は「口」だけでなく、「耳」も深く関わっています。言葉を覚えるとき、私たちはまず「音を聞いて」それをまねして話すことから始めます。つまり、「聞くこと」は「話すこと」の土台なのです。
聞こえが発音をつくる
人は、正しい音を聞けるからこそ、正しい発音を身につけることができます。しかし、難聴があると、この「聞く」段階でズレが生じます。特に感音性難聴では、高音域の音(サ行・タ行・カ行など)が聞き取りにくくなる傾向があります。そのため、無意識のうちにその音をはっきり発音できないことがあるのです。
それは決して「滑舌が悪い」わけではなく、聞こえの特性によって発音の再現が難しくなっているだけです。「耳で聞いて確認できない音」を「正しく再現する」ことは、とても難しいことなのです。
声の大きさのコントロール
感音性難聴の人は、自分の声の大きさをコントロールしにくくなることがあります。自分の声がどのくらいの音量なのかがわかりにくいため、声が大きくなりすぎたり、逆に小さくなったりするのです。
私はどちらかというと「声が小さいタイプ」です。話している時に「え?」と聞き返されることもよくあります。私は難聴で聞き取れなくて聞き返すし、相手は私の声が小さくて聞き返すし……なかなか話が進まないこともあります。😂
ただ、声を大きく出そうとすると、今度は発音が少し不自然になることがあります。自分では気づけないのですが、息の出し方や口の形が変わるからか、「普段は普通なのに、大きな声を出すと発音がおかしい」と言われたこともあります。声が小さいと相手が聞き取りにくいからと、意識して大きな声を出すのですが「変な声になっていないかな」と心配になり、結局また小さな声に戻っててしまう――そんなことを何度も繰り返してきました。
また、聞き取りにくさを補おうと意識を集中していると、話すスピードにも影響が出ます。焦って早口になることもあれば、慎重に話そうとしてゆっくりになりすぎることもあります。「聞こえ」と「話し方」は、表裏一体のような関係にあります。

なるほどー。だから早口言葉で発声練習してたんだ!

そうなんだ。アナウンサーの発声練習の動画なんかを見て、時々練習してるよ。ほんとは自分の発音が正しいか一つ一つ確認しながら毎日続けないといけないと思うんだけどね。
「自分の声」と付き合っていく
難聴があると、相手の声だけでなく、自分の声も正確に聞くことが難しくなります。ときには、自分の声が頭の中でこもって響くように聞こえることもあり、録音を聞いて初めて「自分の声って、こんな感じなんだ」と驚くこともあります。
けれど、自分の聞こえ方を少しずつ理解していけば、自分なりの発音の仕方や伝え方を見つけていくことができます。
例えば
- ゆっくり話す
- 口の動きをはっきりさせる
- 文字やジェスチャーを加える
- 録音して、自分の声を確認する
そうした工夫の積み重ねで、少しずつ、頭の中の声と実際に出ている声の距離が縮まっていきます。「聞こえ」にハンデがあっても、「伝える」力は失われません。相手にどう聞こえるかを人一倍丁寧に考える分、言葉を選び、文章で伝える力が身についたと感じています。
おわりに
聞こえと発音は、まるで鏡のような関係にあります。片方がゆがめば、もう片方にも影響が出ます。その鏡を丁寧に磨くように、自分の声を理解し、向き合っていくことはできます。しかし、いつでも健聴者のような完璧な発音をするのは難しいかもしれません。「うまく発音できない」ことを気にしすぎず、「どうしたら伝わるか」を考えていく。それが、聞こえにくさと共に生きる私たちにできることなのかもしれません。


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